シチリアから始まった70日間の逃避行。本当に長い旅路だった。クレジットカードが自動販売機に飲み込まれたり話してたオジサンが無賃乗車で締め出されていったり電車が大幅遅延してよくわからんバスに乗り込んだり色々なことがあった
最初はそこそこ辛いことも多かったけれど次第に毎日違う場所で歩くのが日常になって食生活以外は馴染んでいく自分がいた。短い旅行も良いけど長くいかないと感じないこともあるので今になっては行って良かったと思っている。この旅から何か月後には例の流行り病が発生して世界が一変してしまったので幸運でもあった。そんな世界が変わる前の最後の夏、モロッコの中心マラケシュにて
最後の街
正直言うとマラケシュではかなりニートしてました。理由としては長旅を終えてもうほとんどゴールの気分だったし邪悪な人々が多かったしでメンタルも結構ギリギリだったので適当に歩く→宿帰る→飯食いに行く→宿帰る→歩くみたいな感じで地元にいるときと変わらないような感じ。それはそれで楽しかった
ホテルが広場から近いこともあり幾度も行ったがそれはそれは賑わっていた。わけのわからない屋台から食べ物、日用品までありもうモロッコのイオンモールだ
街はちょっと細々していて汚いところもあるけど基本的にこの街には色が満ちている。売っているものもカラフルなものが多くてつい買ってしまいたくなる
むせるほどの日常感がこの街に。よく羊の生首を見てきたのであの子たちももしかしたら…
街の帳が降りていく。これが最後の夜かぁと思うと何だか寂しいような気がしてくる。どこもかしこも賑やかさがあってこの中で帰るのは夏祭りを途中で帰るような感覚だ。そしてこの日もタジンを食べてラストタジンとお水を少々
やっと朝が来て、終わりの空港へと。やっととはどういうことかというと多分昨日飲んだ水があたったのかな、ここから二週間ほどお腹の壮絶な不調と付き合っていくことになるので飛行機の中ではそれはそれ大変だった。今となってはそれも良い思い出かな、いや良くないな
もうこんなに旅したからしばらくはいいなと毎回思うけど、数週間ぐらい経つとまた行きたいなとなってくる。あれから三年が経ち、写真を見返すたびに胸に熱い思いがこみ上げてくる。行きたい、旅に出たい。次はいつになるのかわからないけれどあの乾いた光の中にヨーロッパの国々が待っている。その時にまたこの旅を思い出すだろう