旅が始まった。それがわかるのがいつも香水の匂い
空港で旅の高揚感を上げて香水の匂いで本当に旅が始まったと自覚する
こんな逃避行をして写真を沢山撮ったって評価もされないし何の意味があるのかという気持ちも湧いてくるが無理やり押しつぶす
幾度もの乗り継ぎを経てたどり着いたのがシチリアという地。その場の雰囲気、景観ともに全てが違うこの場所は最初の場所にしては刺激的すぎるかもしれない。空港からバスに乗り車窓から外を眺めると奇妙な岩、奇妙な街並み、奇妙な人々…。ただ通り過ぎるだけの場所が気になって仕方ない
パレルモの中央駅近くのドミトリーに着いたのはもう夜。またこのドミトリー生活かと少し嫌気もするが気を引き締めていかないといけない。なにせ70日もあるのだから
イタリアは北と南、半島とシチリア、町と町ですら風土・町並みが違いすぎて驚くものだが私は今まで北イタリアしか行ったことがない。本当のイタリアは南にありその中でもシチリアがまた少し違うイタリアだというのは何度か聞いていたがパレルモにはシチリアの中でも都会性を感じていた。カターニャと共にシチリア主要都市として数えられる場所だが壮大な歴史都市で主要都市とは思えないほど建築物が残り続けている。始まりの場所には良かったかもしれない
シチリアは一度いくとその素朴さに魅了されるという話の通り、私の中でのイタリア像がまた一つ変わった瞬間だった。そしてパレルモは観光地が比較的コンパクトに集まっているのでノンビリと街歩きができる。やはりこの空気感、私はイタリアに来ている
パレルモからTrenitaliaの普通電車にブラブラやられながらやってきたのはチェファルーという街。この海辺の街を見た瞬間に私が愛したクロアチアの街並みを彷彿とし懐かしくなった。悲しいことがあるとすれば私はあの時と同じ一人旅の男だということ
夏の煌めく真っ只中、シチリアが一番輝く季節。帰りの電車では親切そうな移民系男性と話していたがどうやら無賃乗車のようで途中で締め出されていった。なかなかにディープな素晴らしきイタリアの日常
シチリアは海のイメージが強いが起伏の大きい内陸には数多の町々がある。ここ空中都市とも言えるエンナも面白い街だった。パレルモからは一日2本ほどで時間の都合的に朝6時のバスに乗るしかない。観光客は見当たらないし地元の人々もまばらだ
シチリア、ひいてはイタリアはその歴史的に侵略が及ばない高台に街が形成されることが多く観光の際には都市間の移動の労力と坂道が多い街の中を観光する際の2つの労力がかかりやすい印象だ。10kgのバックパックを持つ私にとってそれは辛く悲しい現実だがそれ以上に壮大な景色を見ることができる
主要観光地ではないからこそ見られる光景がある。正直な話、イタリアの運転は荒いしクラクションも鳴りっぱなしで何があろうと運転はしたくないが車であちこち行ってみたいという気持ちもある。イタリアの街並みにはそれほどの引力がある
始まりがシチリアの地で良かったと心底思う。今でなければ来れないかもしれない場所ばかりだ
次に向かうは憧れのヴァルディノートだ