憧れてはいたけれどどうにも手が出なかったもの。いや出してはいけなそうな気がしていたもの。つまりは中判フィルムカメラという世界のこと
フィルム自体が高く、35mmが24,36枚取れるのに対して中判は10枚前後。現像コストも高く良くも悪くも金持ちの道楽だ。それでも私は大金を払い中判フィルムカメラの代名詞とも言えるカメラであるHasselbladの500c/mを購入することにした
正直フィルムを始める前はフィルムカメラはデジタルで行き詰まった時にやるものだというイメージが合ったが今は全く別のものと捉えている。簡単にではあるがこのカメラの魅力、そして中判フィルムの魅力について書いていこうと思う
500c/mについて
中判フィルムカメラの中でおそらく一番有名と思われるこのカメラなので今更ウンチクを書く必要もないだろう。なぜ人気なのかと言われると微妙なところだがデザイン・解像度・操作感など全体的にレベルが高くこれぞ中判という描写ができるため魅入られる人が多い
例に漏れず私もその1人で今にして思えば503CXとかでも良かったのではと言われるとその通りとしか言えないので自分がそっちのほうが合う気がするなら気軽に移っていくのもありだなとは考えている
まず始めはデザインから。私が今回手に入れたのはHasselblad 500c/mのブラックモデル。ただし巻き上げクランクは金属で出来ているタイプ。他には黒のプラタイプなどもあるがここはお好み。個人的には全部黒が良かったのは言うまでもない
1970年の発売で最大シャッタースピードは1/500秒。AE,露出計ともにないが私が今回装着しているプリズムファインダーであれば露出計内蔵なのでわざわざスマホなどを使い測光する必要はない
このプリズムファインダーPME5だが6.2V酸化銀電池(4SR44、4G13)または6Vアルカリマンガン電池(4LR44)などの電池を一つ使うことで動作する。正面から見て右側ボタンを横にスライドすれば電池を挿入できる
左側でフィルムのISOと今のF値を設定して計測ボタンを押せばファインダー内に数字が出るのでレンズ側でその数字に合わせれば適正露出にすることができる。フィルム切り替えの際にISO設定を変えることを忘れないようにしないと私のように失敗してしまうので注意だ(Ektar100→Portra400)
空気感の他にこのカメラを選んだ理由があるとすればこのカメラはサイズが6×6だからだ。中判フィルムにもフォーマットがあり645、6×6、6×7と色々ある。多くの中判フィルムカメラは6×7を採用しているため6×6で考えるとこのカメラが最適だった。ちなみにフィルムマガジンを645版のものを使用すればフォーマットも変えられる便利な仕様だ
フォーカシングスクリーンにはアキュートマットにした。アキュートマットは普通のスクリーンよりも立体感があり中判フィルムには最適なものだが値段がかなり高い。金銭面を考えるのであれば普通のスクリーンでも良いだろう
ストラップはHasselblad独自のものなので付属していない場合は別途購入が必要になる。私はcam-inというメーカーのものをAmazonで購入したが問題なく装着できた
実際最初は複雑に感じていた操作手順も一度覚えてしまえば凄く簡単。ただクランクを回してチャージをすることさえ忘れなければ壊すこともないとは思う。勿論他にも遮光板やモルトといった劣化してしまう要素もあるので使っていくうちにオーバーホールが必要になることも多くはなるとは思うが。少し大丈夫かって思ったのがフィルム装着のときの弛みぐらい。もっとピンと張るもんだと思っていたけれど
レンズはこのカメラの代名詞とも言えるレンズであるCarl Zeiss製のPlanar 80mm f2.8 CF。このレンズには旧型のCタイプと新しいCFタイプの二種類がある。どっちを使うかはそれこそ個人の好みだが比較的現代的な写りをするCFタイプを私は選択した
見ていただければわかる通り最高のデザイン。本当はウエストレベルファインダーにしたほうがもっといいのだがそれはまた今度としよう。当たり前ではあるが重量も2kg近くあるのでお手軽とは言い難いがストラップをつけると体にフィットするのでそれほど重量は感じない。眺めるだけでも元が取れそうな最高のカメラだ
ブローニーフィルム
中判カメラなので勿論フォルムも中判フィルム。俗にというか日本ではブローニーフィルムと呼ばれている120フィルムを購入して使う。100フィルムなら24枚や36枚撮れるだろうが6×6の場合120フィルムは12枚までしか撮ることができない。フィルムは1本あたり1200円近くはするし現像コストも考えると1ショットあたり大体300円が吹っ飛ぶと考えたほうがいい
本当に膨大なコストでスマホでもパシャパシャ無限に撮れる時代にアホかと思ってしまうがそれだけこの中判フォーマットには魅力がある。そして毎日持ち出して撮るような撮影頻度の高いカメラでもないので気を長く持たないと持て余してしまうだろう
そんな話は置いておき今回撮影に使ったのは写真に含まれていないものも含め以下の組み合わせになった
・Kodak Ektar 100
・Kodak Portra 400
・FUJIFILM Pro400H
後ほど作例でも説明するが簡単に書くとEktar100はコントラストが強くハッキリとした発色と最高の粒状性が特徴。Portra400は柔らかい発色で青と緑の色味が印象的。Pro400Hは全体的に青みがかったフィルムらしい透明感が良いフィルムとなっていて全体的に私好みの緑を出せるフィルムをチョイス。全部高級フィルムなので少し財布が痛い
作例
今回私は福岡県にある『ALBUS』というラボに依頼をした。他には山口県の山本写真機店なども有名だが個人的にはこっちの色味の方が好きだったので注文。次回は山本写真機店も利用してみたい
今回の写真はあえてフィルムらしさをそのまま残したものになっている。個人的には現代的な色味・トーンのフィルム写真が好みなのだがスキャナーなど諸々がまだないので入手次第そのような方向性にいくとは思う。参考程度に見ていただきたい
Kodak Ektar 100
EktarはISO100と昼間でしか使用が難しいフィルムではあるがコントラストが高く、緑が美しいフィルムだ。高級フィルムの代表的なもので晴天時での使用では一番美しく映るだろう
ここからは同じEktar100でありながら1年期限を過ぎているフィルムを使用した。色味や明るさに諸々の劣化が起きると一般的には言われているが保存状態などによりそれも大きく変わるだろう。今回使用して感じたのが1年ほどであれば劣化は感じられるものの鑑賞に十分耐えうるということ。お遊び程度に使うのがいいだろう
Kodak Portra 400
非常に使いやすく美しいのがPortra400。緑と青が非常に綺麗で500c/mとの組み合わせならばこのフィルムが一番相性が良さそうだ。個人的には海などが被写体に含まれる場合、一番おススメしたい
FUJIFILM Pro400H
富士フィルムが海外向けに出したフィルムが逆輸入されたのがこのPro400H。青の色味がアクア寄りになった美しく特徴的な色味がこのフィルムの特徴だ。下の写真はEktar100でも出たが両者の違いが見ればすぐにわかることだろう
個人的にはアジサイとの組み合わせが好きなフィルムだ。とはいえ静物でもピントをしっかり合わせるのは難しいので少し暗めにシャッターを切るのも良いかもしれない
持つならこの中判フィルムカメラを
解像度・デザイン・操作性、申し分なし。使っていて感じたのが特別な一枚を撮ろうとするよりも何でもない風景を特別にすることができるカメラだということ
一枚300円というコストからくる慎重さがそれを生み出しているのかもしれないが私はそう感じた。何十年も経った今でも愛され続けている理由を理解できる。デジタルで自分の写真に行き詰まっている人にこそこのカメラに触れて空気感というものに触れて欲しくも思う
もし中判フィルムカメラが気になるのであれば口火を切るのはこのHasselblad 500c/mの他になし。金をフィルムへと変え写真生活を豊かにすることにしよう、実生活をかなぐり捨てても